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ニューヨーク 独自路線のリーダー

2015年11月19日

 国連総会が行われたニューヨークは想像以上に厳しい警備が敷かれていた。ホテルから国連本部ビルに向かうにも所々で警官が道路を封鎖。ただでさえ慣れない出張先の米国で、通れない道から遠回りして目的地にたどり着くのは容易ではない。

 国連本部に着くと、記者登録の手続きが待っていた。長い列に並んでやっと手にした記者用パスを持ってビル内に進むと、ここでも手荷物チェックや移動制限区間が設けられ、自由に動くことができない。

 オバマ米大統領や中国の習近平国家主席といった「世界のリーダー」が集まる場所では無理もない。そう理解しつつも取材が進まないいら立ちでストレスは頂点に。一段落して気分転換も兼ねて外に出た。

 ほどなく路上でスーツ姿の男の一団に出くわし、その中心を平然と歩く女性を見て思わず声を上げた。「ドイツのメルケル首相だ」。記者と擦れ違った時の距離は3メートルほど。一瞬のことで表情を読み取れないが「厳重な警備は不要」とばかりの大胆さ。シリア難民受け入れやギリシャ債務問題で欧州をけん引するリーダーの後ろ姿をあっけにとられて見送った。 (秦淳哉)