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パリ 見えない差別 厳然と

2016年01月25日

 同時多発テロ発生で任地ベルリンから出張したパリで驚いた。人種や階層の融合する「共生社会」が進んでいるとの印象を受ける。白人、黒人、アジア人が肩を並べ、カフェで談議に花を咲かせていた。ベルリンではそれほど見ない光景だ。

 生粋の欧州人と移民の間にある断絶や格差が、社会の荒廃や犯罪、過激主義の温床になったと考えるが、一見しただけでは分からない。

 「確かに、ここはいろいろな人種や階層が交ざっています。でも、見えない差別はある」。多数の犠牲者が出たカフェの前で会ったフランス人クロシャンさん(72)が言った。就職時、履歴書にイスラム名や、荒廃した郊外の町に居住した経歴があると、不採用になりやすいという。

 同じ場所にいたシリア移民のアスカリさん(56)も「汚い仕事はみんな外国人がやってるわね」とはっきり言った。

 平等を建前としながら、厳然とある差別を、だれもが感じている。ラジオで経営者団体の幹部が言っていた。「就職時の差別をなくし、社会を統合しなければならない」。テロはフランス社会の内側に重い課題を突きつけている。 (垣見洋樹)