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米サンタフェ 街が誇る奇跡の階段

2016年02月13日

 1本の柱を軸にぐるぐる回りながら上るらせん階段は、人生のたとえにも用いられる。「ただ回っているだけのように思えても、気が付けば、より遠くまで見えるようになっている」という具合だ。

 ニューメキシコ州サンタフェの教会に奇跡の階段があると聞いて立ち寄った。言い伝えによれば、こういうことらしい。

 教会を建てていた1870年代、完成間際に1階の礼拝席と2階の聖歌隊席をつなぐ階段がないことに気が付いた。構造上新たに設置するのは難しい。修道女たちは祈りをささげた。9日目に年老いた大工がやってきて、狭いスペースに33段の見事ならせん階段を作った。

 奇跡と言われるのには別の理由がある。支柱や壁面との接触がないのに、絶妙なバランスで重みに耐えてきたことだ。

 今の技術では簡単にできることかもしれない。だが「これが奇跡だと信じることで私たちは支えられ、誇りを感じている」と教会の案内役は言った。

 現在は保存するため、階段をぐるっと回ることはできなかった。だけど、観光客や芸術家をひきつけてきたこの街の魅力は見えてきた。 (北島忠輔)