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バンコク 親日と赤字の板挟み

2016年02月02日

 バンコクを一望できるビルの一室は富士山の絵や盾など日本の品々ばかり。そこはタイ国際航空のウィワット副社長の執務室。8年間、日本で勤務して大ファンに。口先だけではなく心底、日本を愛している。

 日タイ間の観光客が増えるにつれ、日本からも自治体の首長が営業担当ウィワット氏へ「タイとうちの地域の空港を結ぶ便の増便を」と要請に来る。

 一方、同社は赤字続き。プラユット首相が同社の経営改善が進まないことに不満を漏らし、年末まで改善しない場合、社長更迭の可能性を示唆。副社長の責任も問われかねない。

 それから間もなく首長来訪を取材した。ウィワット氏は心中穏やかではなかったにもかかわらず、笑顔で対応。その後、執務室で「日本では多くの場所で感銘を受けた。そういった所にタイ人が多く訪れるようになったと聞くとうれしいが…」。経営との板挟みになっている苦悩をのぞかせる。

 それでも「娘は日本語を勉強しているが、私には及ばない。もっと勉強させたい」と少し笑顔も。「親子で日本とタイの懸け橋に」。そんな気持ちが伝わってきた。 (伊東誠)