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マニラ 「今は友だち」に救い

2016年02月03日

 マニラで半日の市内観光に繰り出した。一番の目当てのマラカニアン宮殿(大統領府)は休館。仕方なく日本語のガイドブックを開くと、スペイン統治期に築かれたイントラムロスという城塞(じょうさい)都市の史跡が近かったので、何となく訪れた。

 アレン君(24)というガイドが「私が案内するよ」と声を掛けてきたので、これまた何となくお願いした。マニラ大聖堂やサンティアゴ要塞などを見学したが、ところどころで「ここで日本兵が数百人のフィリピン人を処刑しました」「ここは日本兵が市民を銃殺して埋めた場所です」と説明してくれた。ガイドブックにはない話ばかり。

 太平洋戦争末期の1945年2月から約1カ月間、日米両軍がマニラ攻防戦を行った。激しい砲撃や市街戦で、城塞都市は破壊された。フィリピン人の死者も約10万人に上り、敗走する日本軍は反日ゲリラと疑った人々を各地で殺害したという。

 アレン君は、私が日本人ということで淡々と説明しただけの様子だ。私の表情が曇るのを見て「昔の話よ。今の日本はトモダチ」と笑顔を浮かべた。彼の人懐っこい表情に救われた思いがした。 (平岩勇司)