2016年01月29日
ソウルのど真ん中に鳥の楽園がある-。そんな触れ込みを聞き、漢江(ハンガン)に浮かぶ島の一つ、栗島(パムソム)を訪れた。映画の舞台になり、湿地保全のためラムサール条約登録もされたこの島は、普段は立ち入り禁止だが、ソウル市が報道陣に特別公開した。
島の成り立ちがすさまじい。朴正熙(パクチョンヒ)政権下の1968年、政府は開発途上の漢江の流れを改善する目的で島を爆破。大部分が消失し、島民400人余が島外に移住させられた。だが残った島に漂流物が堆積し、40年以上かけて面積は爆破直後の6倍に広がり、草木が茂る渡り鳥の飛来地に生まれ変わった。
長靴をはき、身の丈ほどある草や垂れ下がる枝をかき分けて進む。100羽以上のカワウが高層ビル群を背景に飛び回るのは、奇妙だが壮観だ。中心部にある記念碑を見て旧住民に思いをはせる。追い出された悲しみと怒りは、島が大切にされていれば少しは癒えるだろうか…。
ふと、一部の木々や川岸が白っぽく染まっているのに気付いた。実に美しい。これも自然の影響かと思って、市の担当者に尋ねると「鳥のふんです」。どこまでも自然の島だった。 (上野実輝彦)