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ベルリン 26歳の未来に光あれ

2016年02月28日

 一体、何度まぶしい思いをすれば済むのか、というほど繰り返し強い日を浴びた。

 雪の後の快晴となったベルリンで、知り合いのイラク人難民の青年に話を聞こうと、高さ368メートルのテレビ塔で待ち合わせた。互いに初めての来場だったので、高さ207メートルの展望レストランに上ってみた。

 彼はカプチーノをすすり、ハンバーガーをつつきながら、一昨年以降、自分の身に降りかかった災難を延々としゃべった。国内で宗派対立が激化し、敵対する民兵組織から何度も脅しを受け、失職。昨年9月、イラクから各国の国境警備をかいくぐってベルリンにたどり着いた。

 携帯電話の翻訳機能でアラビア語を英語に訳しながらだったため、話は5時間に及んだ。

 その展望レストランは360度の眺めを楽しむ回転式。約30分で一回りだから、2人は10回以上強烈な日差しを浴びた。彼はまぶしさを気にもせず、ドイツ語を学んでもう一度職に就く夢を語った。「僕は全てを失ったけど、希望がある」

 26歳の若さでつらい体験を繰り返した彼のこの先の人生には、何度でも、日が当たればいいと思う。 (垣見洋樹)