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米アトランタ 身なりから自信回復

2016年04月25日

 かつて五輪で沸いた米ジョージア州アトランタは、米国の中でも所得格差が大きい街だ。貧困層の生活実態を探ろうと、ホームレスの就職支援をしている民間団体の紹介で、30代の女性を取材した。黒のジャケットにパンツ、ネックレスを身に着け、一見するとホームレスとは分からない格好だった。

 「すてきな服ですね」と話し掛けると、この女性は「全部ではないけど、この団体からもらったの。とてもうれしいわ」とはにかみながら語った。この団体は、衣類量販店などから中古品の寄付を受けているという。

 運営責任者の男性は、ホームレスが求職する際の課題の一つとして「面接で自分を売り込む自信を失っていること」を挙げた。きちんとした身なりをすることで「社会の一員だ」と自覚できる効果もあるのだろう。

 一方で、この男性は「女性のホームレスが増えているので女性用衣類を集めるのが厳しい」と表情を曇らせた。6年前は支援対象の85%が男性だったが、現在の男女比は半々という。就職に向けた訓練以外に、身の回りまで気を配るスタッフの苦労から、格差問題の深刻さを垣間見た気がした。 (東條仁史)