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韓国・慶州 「千年」へのこだわり

2016年04月27日

 現代にも勝る古代国家の技術を見られると聞き、韓国南部の慶州(キョンジュ)を訪れた。紀元前から10世紀途中まで約1000年間、栄えたとされる新羅の首都だ。

 まず目に付いたのは「千年」へのこだわり。食べ物に「千年韓牛(国産牛)」「千年ビビンバ」などと付くものは多数で、タクシー会社まで「千年コールタクシー」と掲げる。観光に活用しつつ、長く統一国家を維持した自負心が垣間見える。

 遺跡では新羅人の技が光った。名所の一つの石窟庵はもともと、洞の上に土をかぶせて内部の湿気を管理していたという。約100年前の発見時、それを知らず土を取り除いたため技術は失われ、今も原理は解明できていない。国立博物館にある高さ約4メートルの鐘の音は、現代の科学者が何度複製しても再現できなかったほど美しいとされる。

 ふと、14面体の珍しいサイコロが目に留まった。ここにも失われた技が-と期待して目を凝らすと、書かれていたのは「3杯を一気飲み」「飲み干して大きく笑う」など酒に関する罰ゲーム。宴席の余興に使ったらしい。酒を大いに楽しむ気質は、千年の都から引き継いでいるようだ。 (上野実輝彦)