2016年05月13日
おかしいなと思ったときは、既に遅かった。ロンドン中心部の地下鉄駅で降りた後のこと。地上に出るためのエレベーターを見ると、人だかりだったため、階段を上った。軽い気持ちで。ところが・・・。
そのらせん階段は上っても上っても終わらない。踊り場もなければ抜け道もない。ひたすら上るしかなさそうだ。一段一段、5分ほど上ると、まだ130段あるとの表示。「マジかよ」。数メートルほど上で、女性が音を上げていた。「どうなってるの、この階段は」。立ち止まって足をこすり、一緒にいた娘に励まされていた。よくみると、同じように後悔している人が結構いる。
「お互い頑張りましょう」。目で合図して、再び上り始める。上ったときはすっかり息が上がっていた。
階段は非常時用で193段。15階分の高さらしい。1907年開業の駅は貴重な建造物のため、階段を含め建て替えられないという。
伝統を重んじる英国らしいといえばそうなんだが、融通が利かないなあという印象はぬぐえない。ただ、うっかり階段を使ってしまうご同輩が意外と多いことに、どこか親近感を覚えたのだった。 (岩佐和也)