2016年05月19日
東京から遊びに来た友人のカップルが「北京の銭湯に行きたい」と言う。調べると、市中心部から南へバスで1時間ほどの庶民街に「双興堂」という銭湯があった。「洗澡(シーザオ)(邦題=こころの湯)」という中国映画の撮影場所にもなり、100年の歴史を誇るという。
入場料は15元(約250円)。湯船は十数人ほどでいっぱい。タイルはサビも目立ち、外国人には少し勇気が必要だった。
印象的なのは、客の誰もが背筋を伸ばし、「堂々」としていること。すなわち、タオルで前を隠さない。無粋を承知で客に「皆さん、隠しませんね?」と尋ねると、「なんでそんな必要があるんだ?」。うーむ、隠す方こそ理由がいるんだ。
かつては庶民の社交場だった北京の銭湯も、急速な再開発でほとんど姿を消した。しかし双興堂では、ひと風呂浴びた庶民が将棋を指し、簡易ベッドで横になって世間話と、湯煙に包まれた伝統が息づいていた。
心も体も温まった気分で、女湯に入った友人と外で合流。感想を聞くと、「タオルで前を隠してたのは私だけ。みんな堂々としてたわ」。うーむ、恐れ入りました。(平岩勇司)