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ロンドン マスクを着けたいが

2016年06月06日

 花粉症という言葉さえ一般に知られていなかった高校時代から、春の山ではくしゃみが止まらなかった。花粉症キャリアは20年超。スギやヒノキの森林がない英国では、春の憂鬱(ゆううつ)から解放されるだろうと思っていた。去年は自覚症状がなかった気がするが、今年は様子が違う。2月から鼻がむずむずして、目がかゆい。

 英国で花粉症は「hay fever(干し草熱)」と呼ばれるように、原因は日本と違い、芝や雑草類が主流だ。きっと何かに反応しているんだろうと思い、ロンドンでアレルギー検査を受けた。でも、どの植物にも反応は出なかった。「何でしょうね」と医師も首をかしげた。

 やっぱり、スギの木か。知人に聞けば、大学のキャンパスや公園にはたまに植わっているそうだ。窒素酸化物(NOx)の排出量では中国を上回るロンドンの汚れた空気も影響しているのかもしれない。

 ともあれ、日本だったらマスクで防備するけれど、この国でマスクを着けて歩けば、変人かテロリストかと怪しまれる。薬を飲むしか対策はない。英国で発症する花粉症は、かえって厄介。 (小嶋麻友美)