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北京 縛られぬ若者に拍手

2016年06月10日

 日本の商社が主催する「大中物産杯日本語弁論大会」が北京市内の大学で開かれ、足を運んだ。参加した16人の大学生はいずれも流ちょうな日本語を駆使し、スピーチは興味を引く内容ばかりだった。

 北京大学の男子学生の弁論には、特に感心した。安倍晋三首相が昨年8月に発表した戦後70年談話を取り上げた。

 談話に関する中国メディアの報道に触れて「批判的なものばかりだ」と指摘。日本語ができる強みを生かして、インターネットを通じ、談話原文に自分で目を通してみた。

 学生は「戦争の苦痛をなめ尽くした中国人の皆さんや、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほどの努力が必要であったか」という談話の一節を紹介。この部分に心を打たれ、中国での批判と大きな距離を感じたという。

 「どうして、マスコミはマイナス面だけ取り上げるのか」と学生は問題を提起していた。当地の官製報道に縛られることなく、事実を柔軟に見つめようとする若い人の姿勢に、大きな拍手を送った。(城内康伸)