2016年06月25日
帽子とマスクで顔を隠した男が現れ、路上を通行中の市民の前で、児童をさらって走り去っていく。大声で泣き叫ぶ男の子。しかし、行き交う人々は男の子に助けの手を差し伸べることもなく、見て見ぬふり-。
こうした複数の場面を編集した動画が最近、中国のインターネット上にお目見えした。実はこれ、本当の事件ではなく、すべてお芝居だ。目の前で児童誘拐が発生した場合、市民がどんな反応をするのかを調査。多くの人が無関心だった現実を伝える内容だ。
中国では児童誘拐が多発しており、動画は「誘拐は、あなたの子供に降りかかってくる可能性もある」と締めくくる。動画は事件を防ぐため、人々に積極的な行動を呼びかける狙いで民間で制作されたらしい。
それにしても、動画に登場する通行人の無関心ぶりには、驚かされる。中国では、思いもよらぬ事件や事故が頻繁に起きるので、人々の感覚がまひしてしまっているのだろうか。あるいは「触らぬ神にたたりなし」ということなのか。
すさんだ光景が、本当に日常化しているのだとすれば、あまりにも悲しい。 (城内康伸)