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エジプト・ワディアルヒタン 砂漠道で知る進化論

2016年07月21日

 「クジラの谷」を意味するワディアルヒタンを訪れた。カイロから南西へ150キロ。約4000万年前に生息したクジラの祖先「バシロサウルス」の化石が発見された場所だ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録されている。

 クジラの谷は、くぼ地のような地形。もともとは海の底だったが、海面の低下で4000万年前に陸地化した。取り残されたとおぼしきクジラ類やマングローブの化石が砂漠に点在しており、さながら屋外の博物館だ。

 来場者は、砂漠道を歩きながら化石を見学する。また、クジラ谷に最近完成した建物には、体長20メートルのバシロサウルスが展示され、パネルで地球の陸地変動の歴史も説明されている。

 実は、この場所で見つかったバシロサウルスには退化した後ろ脚が残っている。陸から海に活動の場を移したとされるクジラ類の進化の過程を知るうえで貴重な化石とされている。

 ところで、世界には進化論を否定する人が少なくない。イスラム教徒の多数、つまり、多くのエジプト人も進化論を信じていない。クジラの谷は、エジプト人にあまり知られていないそうだ。 (中村禎一郎)