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台南 史跡の街と 間と笑顔

2016年07月25日

 台湾の歴史を学びながら南部の古都台南を巡った。17世紀初頭に軍隊を率いて安平を占領したオランダが築いたゼーランディア城、100年以上の歴史を有し、台湾の文化遺産に指定されている建物を活用した台湾文学館などを訪れた。

 台湾最古の台南孔子廟(びょう)も訪れたが、日本だと本殿に当たり孔子が祭られている大成殿は、5月12日に連続したマグニチュード(M)6級の地震のため修復中で、残念ながら拝観はかなわなかった。

 歴史ある建造物を保存する目的で、台湾当局が建物を買い上げ、若い芸術家に活動場所として提供しているという地域も見て回った。目に入った展示場所の案内板には「市定古跡原日軍第二連隊官舎群」の文字。

 年配の男性ガイドが「戦後、復興が進む台北や高雄では、旧日本軍が残した建物や像が壊された。発展途上だった台南は後回しにされ、結果的に多く残った」と説明してくれた。

 「残って良かったのでしょうか」と問う。一瞬の間を置いて「良かったということにしましょうよ」と笑顔が返ってきた。あの間と笑顔が史跡以上に印象に残っている。 (横光竜二)