2016年07月29日

　「ドオン、ドオン」。爆発音とともに装甲兵員輸送車が近づいてくる。黄色い煙幕が張られ装甲車の扉が開くと、迷彩服姿の兵士たちが「ウォー」と声を上げて飛び出し、地面にはいつくばって銃を構えた。金浦に基地を構える海兵第２師団が報道陣に訓練を公開した。

　漢江（ハンガン）河口付近で対岸に北朝鮮を望む地域。韓国軍所有の監視施設は一般開放されているが撮影の制約は厳しく「われらは祖国の剣先だ」といった標語が掲示され、緊張感が漂う。

　訓練後、兵士の一人は報道陣に「挑発があれば任務を完璧に遂行する」と厳しい表情を見せた。装甲車内部を撮影する記者を止めに来た別の兵士は、サングラスをかけ身長１８０センチはあるこわもて。「ダメだダメだ」と手ぶりを交えて言われると、思わずひるんでしまった。

　だがその日の夕方、兵士たちの表情がゆるんだ。女性Ｋ－ＰＯＰアイドルが、基地を慰問したのだ。歌やダンスに「かわいい！」「こっち向いて」と声援を送り、ツーショット写真の撮影を求める姿を見ると、有事に備える精鋭兵たちが普通の若者でもあることを痛感した。　（上野実輝彦）