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米ジョージタウン 人づくり どう伝えた

2016年08月10日

 「モノづくりは人づくり」。久しぶりにこの言葉を聞いた。米ケンタッキー州ジョージタウンのトヨタ自動車の工場。昨年10月、高級車ブランド・レクサスを米国で初めて生産し始めたラインを訪れた。工場を統括する日高進(のぼる)さん(55)に、トヨタが誇る最高の技術をどのように米国人に伝授したのかをじっくりうかがったときのことだ。

 とりわけ「職人技」が求められるのは車体表面のへこみやゆがみを見つけることだという。生産効率を上げるため、多くの工場でロボットが導入されるようになったが「人間の目、手の感覚に勝るものはない」と断言する日高さん。こうした技能を向上させるための機器を米国人従業員が開発し「レクサスの域」を目指してきたという。

 技術者の中には職人気質の人も多く、時には厳しい指導もあっただろう。日高さんは「米国は(映画の)『ロッキー』を生んだ国。スポ根が好きなんですよ」と笑った。日本が世界に冠たる工業国になれたのは、優れた技能を伝承してきたからだ。簡単に他国がまねできない技術を世界に広める過程で、日本経済の価値が再評価されていくことになるはずだ。 (東條仁史)