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台湾・淡水 新公開 畳敷きの古跡

2016年10月27日

 台湾北部・淡水の取材帰り、「紅毛城」に寄ろうと考えた。オランダが建てた古城だ。途中、女性に道を聞くと「修理中で10月まで中に入れないよ。外から見るだけで入場料80元(約250円)。損だよ」。続けて「あんた日本人でしょ。トオテンロンチーの家を見なさいよ」。漢字で書いてもらうと「多田栄吉」。日本人の名だ。

 教えられた坂道を行くと、数寄屋門が見えた。門をくぐると、そこには懐かしい平屋の日本家屋。係員は「先週から公開しました。入場は無料です。スリッパを履いて上がってください」。どの部屋も畳で落ち着く。庭に面したサンルーム風の廊下に出ると、眼下に街が広がる。その向こうに淡水河、さらにその奥には観音山が横たわる。素晴らしい景色だ。

 係員によると、「多田栄吉」は「淡水街長」。今の町長のような役職だ。西洋人居住区に近いこの地に1937年、自費で建て、水道も引いた。台湾で水道付き民家の第1号という。新北市は2011年に古跡指定したが、修復を重ね、ようやく公開。古跡の街・淡水にまた新たな観光スポットができた。 (迫田勝敏)