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北京 その発想は なかった

2016年11月08日

 私が住む北京のマンションの上の階に数カ月前、新しい住民が入居してきた。天井からバタバタと走り回る音が騒々しい。幼児がいる中国人の家族とか。日中、仕事でほとんど留守にしているので、多少の生活騒音はしかたがないと決め込んだ。

 程なくして、ピアノを弾く音が聞こえだした。まだ始めたばかりとみえ、単調な音階を「カンコン、カンコン」。それが連日、夜の10時すぎまで私の部屋にまで響き渡る。さすがに耐えきれず、不動産仲介業者に「情操教育も大切とはいえ、遅くても午後9時までのピアノにしてほしい」と伝えた。

 ところが、その後も夜遅くまで「カンコン、カンコン」は鳴りやまない。業者によると、夜間のピアノは、帰宅した一家の主(あるじ)らしい。再び業者に苦情を言うと、業者いわく、「もう一度注意してみるが、それでも聞き入れてもらえない場合は、引っ越しもご検討を」。

 幸い、粘り強く抗議したかいあって、深夜の“演奏”はやんだ。それにしても、予想外の業者の提案には驚いた。北京に長く住む韓国人の友人は「発想の違いですよ」と笑うが、やはり理解に苦しむ。 (城内康伸)