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パリ この街の今 伝えねば

2016年12月05日

 パリの下町地区にある中華料理店。人気の鍋でもつつこうと友人と足を運んだ。相席になったのは出張で訪れた日本人2人組。杯が進むにつれ、治安の話になった。「意外に街は安全ですよね」。周囲から心配されてやってきた2人はイメージとのギャップに驚いたという。

 昨年末から続いた大規模なテロ事件。「新聞もテレビもとてつもなく大きく報じてましたもんね…」。マスコミが危険な印象を助長しており、私もその共犯者というわけだ。

 あれだけの報道になったのはまず「パリ」や「フランス」が舞台だったからだ。それに加え、移民や過激化する若者の問題など「大ニュース」たらしめる訳があり、記事でもそのような社会に内在する事件の背景を報じようと努めた。

 ただ、インターネットも含め大量の情報下で、日本人の頭に植え付けられてしまったのは結局、センセーショナルな光景と恐怖だったのかもしれない。

 街が落ち着きを取り戻す中、11月13日には130人が死亡したパリ同時多発テロから1年を迎える。冷静な目で、今の姿や変化を伝えなくては、と思う。 (渡辺泰之)