2016年12月16日
思わぬ所で懐かしいメロディーが流れた。「スイート・チャイルド・オブ・マイン」。20年以上前に日本でもヒットした米国のロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズの代表曲だ。
ハバナの病院で取材していた時のこと。脇に座っていた若手医師の携帯電話が鳴った。「米国による経済制裁の影響で、必要な薬を輸入できず、不都合がある」。上役の医師がそんな話をしていた時だった。
着信メロディーに「あれ?」と「やっぱり」が交錯した。キューバは半世紀にわたり、米国と対立してきた社会主義国。情報は統制され、米国の音楽を楽しむことは禁じられていると聞いていた。
だが、実際のところ、国民はあの手この手で米国の文化に触れている。所々にある公衆無線LANのスポットでは、人々が集まってスマートフォンをのぞき込んでいる。そんな姿から、画面を通して思想や言論の自由に触れた若い世代が、将来のキューバを変えていくに違いないと想像した。
「俺たちはどこへ行くのだろう?」。若手医師の電話から流れた曲の歌詞が、頭の中でこだました。 (北島忠輔)