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ニューヨーク 耐えてきた「勝ち組」

2017年01月17日

 ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選の開票を徹夜で取材した翌朝。コーヒーを買って支局オフィスに戻るエレベーターに乗り込んだら、赤い野球帽をかぶった白人男性がいた。

 「アメリカを再び偉大な国に」と白い糸で縫い込まれた帽子は髪形と並ぶトランプ氏のトレードマーク。

 「勝ちましたね」と声をかけると、男性は応じた。「実は今日までこの帽子をかぶるのをためらっていたんだ。人前でトランプ支持者と言いにくくてね」。相好を崩すと「選挙で勝ったんだから、もうこそこそしなくていいだろう」と軽い足取りで降りていった。

 トランプ氏の外国人への差別発言や女性に対する下品な振る舞いに対する批判は、支持者にも向けられたと聞く。それでもひそやかに支持し続けた人たちが前評判を覆す奇跡の当選を演出したのだろう。

 職場や地域で、じっと耐えてきた人たちが「勝ち組」に変わった時、何が起きるのか。夕方そんなことを考えながら帰路に就いた。大通りでは、トランプ氏に反発する若者らが「私の大統領じゃない」と叫びながら歩いていた。 (北島忠輔)