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北京 「当たり前」が難しい国

2017年01月31日

 地域の人民代表(議員)を投票で選ぶ5年に一度の直接選挙が中国各地で行われている。共産党や政府系団体に推薦された候補者ばかりなのだが、当局の推薦を受けず立候補する「独立候補」も一部にいる。

 独立候補は役人の腐敗追及や人権問題を訴えるため、常に妨害に遭う。「今度、街頭でビラを配る。取材に来るか」。複数の候補とやりとりしたが、直前になり「警官が家を取り囲み、外に出られない」「地元の役人に『ビラを配るな』と警告された」と連絡が入った。

 盗聴や尾行、さらに当局に従順な住民の監視により、彼らの行動は常に把握されている。独立候補が路上で見知らぬ男に殴られる事件も相次いだ。

 その中で、初めて北京で選挙に出た農民の男性は監視が比較的少なく、ある日の朝、自宅近くの市場でビラを配ることができた。こちらは遠くから携帯電話で隠し撮り。1カ月近く追い求めた光景がようやく撮れホッとした。ただ、この男性もすぐビラ配りを阻止されていた。

 候補者が街頭で選挙活動をする。そんな当たり前のことが、いかに貴重かをあらためて思い知らされた。 (平岩勇司)