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キエフ すれ違う2つの言語

2017年02月22日

 ウクライナを訪れると不思議に感じることがある。ウクライナ語とロシア語という異なる言語で自然に会話しているのだ。

 ウクライナ語で質問して、ロシア語で返す。逆もしかり。共通する単語はあるものの、50%以上は違うという。ソ連時代の教育で、ある世代以上はロシア語を第1言語としていたこともあり、家族でさえ違う言語でやりとりすることがあるという。

 とはいえ、こうした光景は減りつつある。クリミア半島併合や東部の紛争による対ロ感情の悪化で、ウクライナ語への純化が進んでいる。

 ロシア語を第1言語とする40代の女性。最近、職場で、ウクライナ語の書類作成が義務付けられた。「話していることは分かるけど、書くのはやってこなかったから、文法を勉強し始めた」と苦笑する。

 政変から間もなく3年、キエフの街は平静を保つ。しかし、道行く人に「ロシア」という言葉を向けた途端、ヒリヒリした感情が表に出る。ロシアからの電話というだけで「信用できない」と取材依頼を断られることもあった。今や異なる言語による主張がすれ違う。溝は深いと思い知った。 (栗田晃)