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ソウル 心温まるおせっかい

2017年02月20日

 どうも誤解していたようだが、日本の東北地方と緯度が同じソウルの人々は、寒冷地に住むといっても耐寒性があるわけではなさそうだ。日本人より寒さに敏感だと思う。

 秋から冬に季節が移ると、あるソウルの友人は私より先にダウンコートを着始めた。ブルブル震えつつ「この時期の外出は嫌い」。

 韓国の住宅には床暖房のオンドルがほぼ完備されているので、屋外の寒さが際立つとのことだ。朴槿恵(パククネ)大統領を事実上の失脚に追い込んだ市民集会も、弾劾案可決後は「天候のため」終了時刻が早まっている。

 「なぜ、こんな格好をさせてるのよ!」。最近、2歳の娘と歩いていた妻が高齢女性に呼び止められた。娘のズボンと靴下の間にある数センチの隙間が寒そうだとの指摘。赤の他人に注意してくれるとは、寒がりな上にぶしつけ・・・ではなく率直な方だ。

 さらに女性は、寒がりで率直な上におせっかい・・・ではなく親切なことに、娘の靴下をぐいぐい引っ張り上げてくださった。ぽかんとする私たちとゴムが伸びた靴下を尻目に、満足げに、そして少し寒そうに立ち去っていった女性。韓国らしい冬の一幕だった。 (上野実輝彦)