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北京 悪いの食堂か当局か

2017年04月17日

 自宅近くの住宅街の一角にあった食堂街は値段も安く、地元の中国人に人気だ。店の前の細い路地は串に刺したヒツジ肉を焼くときに立ち上る煙で満ち、夜遅くまで酒を酌み交わす客の姿が窓ガラス越しに見えた。

 ところが先日、この10店ほどの食堂が突然すべて閉店となった。店内の電気も消え、窓に引かれたカーテンの向こう側は真っ暗。よく見ると「北京市食品安全当局の指示で店を閉めた」との張り紙がしてあった。

 「あの店は違法営業だったから仕方がない」と説明してくれたのは近所に住む日本人。確かに住居から路地側に張り出した形で店舗が造られており、勝手に店舗部分を建て増して食堂を開いたのは間違いなさそうだ。

 しかし、このうちの1店舗は確か昨年秋に改装したばかりだった。清潔な店構えで客足を伸ばしたのにいきなり閉店とは。店のオーナーもがっかりしているに違いない。

 だが、違法営業が見逃されたのは「賄賂を渡していたから」との噂(うわさ)も。こうなると本当に悪いのは誰なのか、考えてしまう。安くてうまい食堂を奪われた客が一番の被害者なのは間違いないのだが。 (秦淳哉)