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ベルリン クールな一筆は「猫」!

2017年04月13日

 書道の師範の資格を持つ妻が現地の小学校との交流で、放課後のクラブ活動の書道講師を務めた。

 筆を持つのも初めての1~6年生のドイツ人男女8人。「一」を書くのに右から左へ線を引いたり、新年の抱負を書く授業でどうしても「猫」を書きたいと言い張るなど指導は一筋縄ではいかなかった。

 それでも、直接意味を表す文字を持たない彼らは漢字に興味津々。エミリアという子の名前を当て字で表すのに、エは永遠の「永」や恵まれるの「恵」などが使えると説明すると、喜んで筆を動かしたという。

 中には竹製の額に入れた自分の作品を部屋中に飾ったり、親に頼んで筆ペンを取り寄せた子も現れた。8人はほぼ休まず14回の講座に出席。一部の子からは講座存続の要望もあった。

 寿司(すし)やアニメなど日本文化への関心は高い当地だが、最盛期は日本経済が絶頂を極めた1980年代。経済力が衰えつつある最近、日本学の講座を閉じる大学も出ている。

 書を通じて日本に触れた8人が、現在の時流に対して、ささやかであれ「抵抗勢力」となってくれるように願う。 (垣見洋樹)