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米バークリー 食事は食べ方も大切

2017年05月09日

 世界で最も予約を取るのが難しいと言われるカリフォルニア州バークリーのレストラン「シェ・パニース」。ランチメニューの一番下にあった小さな文字に、目が留まった。

 「テーブルで携帯電話やパソコンの使用はご遠慮ください」

 食材の持つ本来の味を生かした料理が評判のレストラン。オーナーのアリス・ウォータースさん(72)は「食べ物だけではなく、どう食べるかも、すごく大切なこと」と語っていた。

 ウォータースさんによれば、ファストフードと携帯電話の共通項は「人間性の喪失」。どんなに手軽でも、車の中で取るような食事は人間的じゃない。同じように、携帯電話を食事の相手にすべきではないという。

 言われるまま、携帯電話とパソコンを封印すると、視線は上がり、レストランの雰囲気に敏感になった。キッチンで働くさまざまな人種の調理師の生い立ちを想像し、生けられていた梅のつぼみに生命力を感じた。

 待ち焦がれたサラダに続き、豚肉のソテーが運ばれてきた。鋭くなった味覚を満たしてくれた時、メニューのひと言が味を添えてくれたと気が付いた。 (北島忠輔)