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中国・景徳鎮 磁器の街に戦争の傷

2017年05月10日

 江西省の景徳鎮市に行くため、在来線の長距離列車に乗った。緑のレトロな車両に乗るのは、30年前の学生時代に中国を旅して以来だ。

 当時は駅で切符を買うのも行列で半日がかり。乗車すると通路も人だらけ。車内に設置された給湯器で熱湯をコップに入れた人が「開水(カイシュイ)(お湯)!」と大声で歩く時だけ、乗客は通路を開けた。申し訳ない思い出だが、急に腹痛に襲われた時、トイレに急ぐため「開水、開水!」と叫び、かのモーゼのように通路を開けさせたことがある。

 今では、切符はネットで購入、客はみな予約座席。通路に陣取る人など、もういない。

 景徳鎮に着くと、古来の磁器を展示する施設「古窯民俗博覧区」を訪れた。宋時代の景徳年間にちなみ名が付いた景徳鎮。涼やかな青白磁や精美な絵付けの青花磁器など、数多くの名物が居並んでいる。

 素人なりに楽しんでいると、年表を見つけた。1000年の歴史を眺めていたら、小さい文字で「1939年 日本軍機 数次にわたり無差別爆撃 工房破壊、住民多数死傷」とあった。これも忘れてはいけない歴史だと、胸に刻んだ。 (平岩勇司)