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ベルリン 音楽好き育てる思想

2017年05月18日

 2人の娘がベルリン南地区の音楽コンクールのピアノ部門に出場し、ともに1等賞を獲得した。といっても、上の娘の階級では1等賞が9人、下の娘の方は5人いる。基準点を上回ればみな1位という絶対評価だ。

 もちろん2人は喜んでいる。初挑戦のコンクールでは、子どもたちを音楽の世界に引き込む仕掛けがいくつもあった。

 まずはアクセスの容易さ。出場は無料。会場はこぢんまりとした音楽教室の一角で、ドレスなどで着飾る必要もない。

 そして審査の寛大さ。下の子は3カ所ほどミスしたが、それでも満点。4人の審査員たちは「音がとってもきれい。感動させてくれたわね。ミス? そんなの小さなこと」とコメント。減点主義は採っていない。

 なにより、周囲の大人たち自身が大会を楽しんでいる。後日、豪華なコンツェルト・ハウスで行われた表彰式。自らの子が参加したわけでもないのに、受賞者の記念演奏を聴こうと8ユーロ(約1000円)の入場券を買って入ってきたおじさんたちが、盛んに拍手を送っていた。

 地域挙げて音楽好きの子を育てていこうとする思想が伝わってくる。 (垣見洋樹)