2017年06月23日
身長1メートル20ほどのポニーテールの少女は突進してきそうな猛牛を前に微動だにしない。「私に何をしようというの」と言わんばかりに、手を腰にあてて立ちはだかっている。
ウォール街を象徴する雄牛像チャージング・ブルとの対照が印象的な少女の銅像が姿を現したのは、国際女性デーの3月8日だ。金融会社が女性登用を促す狙いで設置し「恐れを知らぬ少女」と名付けられた。
だが、雄牛像の製作者ディモディカ氏は反発。1987年の株価大暴落の後、米経済回復への思いを込めて作った銅像が「女性の敵」と見立てられたことに「米国の強さを表した私の作品の価値を損ねる」と撤去を求めている。
少女像と記念写真を撮っていた女性は「格差が拡大した今の時代では、強欲のシンボルに見える。このまま残してほしい」と新たな名所を歓迎した。
もっとも、この雄牛像も89年にディモディカ氏がウォール街に無断で設置し、いったん撤去された後に要望を受けて今の位置を確保した経緯がある。時代の波に揺られて姿を変えていくのは、いかにもニューヨークらしい。 (北島忠輔)