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ウクライナ・ヤルタ 実効支配の色濃い街

2017年06月28日

 海を見下ろす高台に「3人」が鎮座していた。ウクライナ南部クリミア半島のヤルタ。第二次大戦末期の1945年2月、この地で戦後処理を密約した旧ソ連のスターリン、米国のルーズベルト、英国のチャーチルの3首脳の銅像があった。

 銅像は意外に真新しい。ロシアがクリミア半島を併合後、2015年2月に設置された。先住民族のクリミア・タタール人を中央アジアに追放するなど、スターリンは忌むべき独裁者として扱われてきた。銅像はロシアの実効支配の象徴でもある。

 併合から3年、経済制裁の影響でクリミアから欧米資本が撤退。ファストフードも銀行もよそでは見ない独自の店名で、街並みに違和感がある。リゾート地のヤルタはロシア人客だけとなり、観光関係者からは苦しい懐事情が聞かれた。

 ヤルタ会談では、ソ連の対日参戦が決まり、北方領土問題の原点でもある。会談の場で、現在は博物館となっているリバディア宮殿を訪れると、あいにくの臨時休館。ウクライナ東部の一部地域を支配する親ロ派勢力がやってきて、会議を開いているのだという。実効支配の現実に、思わずため息が出た。 (栗田晃)