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中国・丹東 あまりにも違う光景

2017年07月19日

 北朝鮮と鴨緑江を挟んで向かい合う中国遼寧省の街・丹東は5月から10月にかけて、観光シーズンだ。中国人観光客に人気なのは、国境を接する北朝鮮平安北道新義州や人々の様子を眺める「国境1日旅」や、新義州への日帰りツアー。丹東市内の旅行会社店頭には、ツアーを誘うビラがあふれ返り、客引きが盛んに声をかけてくる。

 5月下旬、定宿にしている鴨緑江に面したホテルの宿泊料金は、冬季の2.5倍に値上がりしていた。それでも、ほぼ満室だ。このホテルの利点は、両岸をつなぐ「中朝友誼橋」を毎日朝夕に行き交う貨物車両の動きを確認できること。地元の知人を介して従業員と交渉し、ようやく1室を確保した。

 北朝鮮から仕事で来た旧知の男性を部屋に招き入れた。窓越しに川辺を眺めると、無数の観光客でにぎわっている。「今の時季、祖国(北朝鮮)の街角では、こんなに人が集まっている光景は見られないよ」と男性。北朝鮮では5月から6月初めにかけ、人々は「田植え戦闘」に連日、動員される。男性の目には、談笑する人々に対する羨(うらや)ましげな色が、浮かんで見えた。 (城内康伸)