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パリ 極右の爪 隠しきれず

2017年08月05日

 フランス総選挙はマクロン大統領派の圧勝で終わった。伸び悩んだのが極右・国民戦線だった。大統領選でルペン党首が決選投票に進出。勢いは続くとの見方もあったが、投票が近づくにつれて失速した。

 なぜか。思い当たるのは大統領選決選直前のテレビ討論だ。その日、ルペン氏は政策論より個人攻撃が目立ち、揚げ句はネット情報を持ち出して攻撃した。「彼女は変わっていない」-。ある主要紙は一面に父親の写真を掲げて痛烈に皮肉った。四割あった支持は漸減。勝敗は決した。

 記者は昨秋、彼女に単独取材をしている。机の上には手書きのメモが置かれ、微妙な表現は時折、目を落とし答えていた。豪快な印象とは違い、慎重で冷静な所作に驚いた。それだけに画面の姿は解せなかった。

 彼女の戦略は「脱悪魔化」といわれる。父親時代の差別的なイメージを消し、弱者寄りの政策に転換し、支持を拡大。「普通の政党」への脱皮を図ってきた。

 だが、わずか2時間半の討論で長年の努力はもろくも崩れ去った。あの夜、国民は、隠されてきた極右の「爪」に再び気付いてしまったのではないだろうか。 (渡辺泰之)