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香港 30年後 どんな街に?

2017年08月21日

 香港に出張すると必ず利用する食堂がある。料金と味は平均的だが、ガラス窓越しに見える店内は客の熱気であふれ返っていて、つい足が向いてしまう。

 「ビール、ノム?」。片言の日本語で話し掛けてくる男性店員の気さくな態度も気に入っている。メニューを見て注文を迷っていると、お勧めの料理も教えてくれるからありがたい。食べている途中も「オイシイ?」と聞いてきた。何げない気遣いだが、街に受け入れてもらえた気持ちになって心地いい。

 7月1日、香港は英国から中国に返還されて20周年を迎えた。だが、政府主催による記念式典の華々しさに比べ、民主化を求めるデモ行進はどこか力強さを欠いた。昨年11万人のデモ参加者が今年は6万人。2014年の「雨傘運動」が挫折、市民には無気力感も漂う。

 夜になると返還を祝う花火が約25分間、ビクトリア湾で打ち上げられた。爆音とともに夜空を彩る赤、青、黄。50年間維持を約束した「一国二制度」は30年後に終わる。その頃の花火は香港市民の目に何色に映るのだろうか。旅行者を引きつける魅力は色あせないままであってほしい。

 (秦淳哉)