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モスクワ 映画が日ロをつなぐ

2017年09月06日

 カンヌやベネチアなどに比べて知名度は劣るが、モスクワ国際映画祭が6月末に開催された。コンペティション部門に出品された日本映画「4月の永い夢」の公式上映に行った。

 恋人を3年前に亡くした女性が、周囲との関わりで前向きな気持ちを取り戻していくストーリー。繊細な感情の機微を追う展開がロシア人に伝わるかと思ったが「優しい気持ちになれる」と反応は好評のようだった。

 中川龍太郎監督は弱冠27歳。上映後の記者会見ではロシア映画や文学の影響を語った。現代のロシア人でさえあまり知らない1930年代に活躍したソ連の映画監督の名を挙げ、現地の映画評論家らを喜ばせた。

 最優秀作品賞は逃したが、国際批評家連盟賞などを受賞。閉幕後、中川さんに会うと、期間中には演劇鑑賞などにも出かけたことを語り「刺激になる経験ができた」と笑顔を見せた。

 黒沢明監督がかつてソ連に招かれ「デルス・ウザーラ」を撮影したように、ロシアでは日本映画への関心は高い。中川さんも「いつかはロシアで撮影を」と夢を語った。映画という共通言語を持つ人たちの姿が、うらやましく思えた。 (栗田晃)