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英ドーバー 離脱連想する撤退劇

2017年10月10日

 「ホワイトクリフ」と呼ばれる英国側の白い崖が、穏やかに水平線上に遠ざかる。この夏、英国で封切りされた映画「ダンケルク」(日本は9月9日から公開)の舞台をたどろうと、英仏を隔てるドーバー海峡をフェリーで渡った。

 映画は1940年、ドイツ軍に包囲された英仏軍30万人超を、北フランスのダンケルクから英本土に漁船まで駆り出して救出した「ダイナモ作戦」を描く。撤退劇なだけに「欧州連合(EU)離脱を連想させる」との指摘もある話題作だ。

 作戦本部跡は、英側の港町ドーバー近くの白い崖に掘られたトンネルにある。ガイドの説明では「もともと、ナポレオン侵攻に備えて掘られた」というから、やはり欧州大陸とのせめぎ合いの歴史を感じさせる。

 ドーバーからダンケルクまではフェリーで約2時間。砲弾や戦闘機が飛び交った海は、今は英国とEUを結ぶ貨物船がひっきりなしに行き交う。

 「私はここに残る。まだフランス人がいる」。映画では英軍司令官がダンケルクの浜辺で語る場面がある。一方的な撤退劇ではない。離脱交渉もそうなると信じている。 (阿部伸哉)