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パリ 「憎しみを贈らない」

2017年10月24日

 何度同じ光景を見たことだろうか。無数のろうそくや花々。バルセロナで再び惨劇が繰り返された。現場である人は祈り、ある人は涙を流していた。

 「平和」「愛」「連帯」・・・。現場に人々がしたためた言葉はこれまでフランス語だったり英語やドイツ語だったりした。今回はその多くがスペイン語やカタルーニャ語だった。

 2014年秋にパリに赴任して3年。この間、テロの連続だった。15年のパリの週刊紙襲撃に始まり、130人が犠牲になったパリ同時多発テロ、ブリュッセル、南仏ニース、ベルリンと現場を取材してきた。

 テロリストの原動力は憎悪だ。それは中東だけではなく欧州内にも浸透。やいばが一般市民に向けられ、社会に治安不安が広がった。根本的な打開策もないままテロが続く。取材する者としても途方に暮れた。

 「君たちに憎しみという贈り物を贈らない」-。同時多発テロで妻を亡くしたアントワーヌ・レリスさんはこう犯人たちにつづった。憎悪や暴力の連鎖と応酬は必ず次の憎しみを生む。悲しみに包まれた今だからこそ、もう一度、この言葉をかみしめたい。 (渡辺泰之)