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中国・蘇州 運河の街でゆったり

2017年12月21日

 中国の大都市上海中心部から西に約90キロ。十数本の運河と、その運河をまたぐ無数の石橋がシンボルの江蘇省蘇州市同里は「東洋のベニス」と呼ぶにふさわしい水郷の街だ。

 100元(約1700円)の入場料を払って足を踏み入れた旧市街には、石畳が敷き詰められ、100年以上前に建てられた白壁の民家が運河に面して並ぶ。どの家の裏口にも、川へと下りる階段があり、人々が運河と共に暮らしてきたことがうかがえる。

 昔は運河の水を飲み水に利用していたという。運河には、住居に改造した木製の船も浮かぶ。何かを料理しているのだろう。そのうちの一艘(そう)からは、白い湯気とともに、生活のにおいが漂ってきた。

 レストランや茶館のちょうちんに灯がともった夕刻。民家のベランダから釣り糸を悠々と垂らす初老の男性をみつけた。近づいてみると、バケツの中に小魚が2匹。「これは?」と尋ねると、男性は「食うんだよ」とほほ笑んだ。

 時間がゆったりと流れる同里の風情はどこか懐かしい。慌ただしい北京の生活で疲れ気味の体と心が、ほんの少し、癒やされた気がした。 (城内康伸)