2018年01月10日
カカン、カン、カーン。金属を打つ硬い音。温泉がブクブク湧き立つような音も交じる。10月中旬のある日、未明にトイレから寝室に戻り、目を疑った。床が一面水浸しになっている。わずか数分間の出来事だ。
わが家はバンコク中心部のマンション2階にある。猛烈な雨で水が排水管を逆流し、ベランダの排水口から噴き出して、ドアの隙間から浸入したらしい。
マンションの管理スタッフを起こし、水をかき出してもらうのに約1時間。ドアの外に土のうを積む応急措置となった。
この夜、バンコクでは1時間の雨量が200ミリを超え、約30年ぶりの豪雨。翌朝、窓から見る風景は前日から一変していた。道路はまるで川。水が引くのは午後になった。交通は終日乱れ、週末なのに家に缶詰めの知人も多くいた。雨期の9月に赴任し、少し慣れた気でいたが、熱帯気候の激しさを思い知らされた。
タイで大洪水が起き、日系企業の工場が次々冠水したのは6年前の今ごろ。雨期の終盤だった。同じような災害が起きなければいいが。水を吸った床の張り替えを待ちつつ、そう願うばかりだ。 (北川成史)