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ウィーン 排外と寛容の綱引き

2018年01月04日

 オーストリア総選挙の2日前、ウィーンの一角は熱狂に包まれていた。ステージに立つ極右、自由党のシュトラッヘ党首が「移民や難民に支払われている生活費を、介護が必要なオーストリア人のために使う」と力説すると、支持者らは小旗を揺らして声援を送った。党首はイスラム教徒も標的にした。「われわれの思想に影響を与え、過激化の温床になっている」

 片や、同じウィーンには難民キャンプが点在し、多くの若者が支援活動にいそしんでいた。その1人、ベナーさん(34)は「実際に難民と触れ合わずに『悪いもの』というレッテルを貼らないでほしい」と訴えた。

 いわば外国人嫌いの排外主義と寛容な人道主義。人口の1%を超す難民申請者が急激に入国し、国内が混乱したオーストリアの世論は岐路に立っている。

 今のところ「極右」と言っても、戦前のナチスのようなイメージはない。党首は過激な言葉を控え、ステージはバンド演奏などで華やかに演出され、穏健な雰囲気だ。ただ、排外と寛容の綱引きがどちらに傾くかは分からない。1人の外国人としても、綱の行方が気掛かりだ。 (垣見洋樹)