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上海 快適な列車旅の秘策

2018年01月19日

 日曜日の午後。江蘇省蘇州から隣の上海まで鉄道に乗ろうとしたら、当面の列車はいずれも満席。やむを得ず、「立席」乗車券を買って、急行列車に飛び乗った。指定された車両とその連結部分は案の定、ぎゅうぎゅう詰め。密着する乗客と、大きな荷物が放つすえた臭いで、気分が悪くなった。

 ふと、隣の車両に目を向けると、そこは食堂車。しかも、車内に並んだ10卓ほどのテーブルは空席だ。約1時間の乗車時間を食堂車で過ごそうと移動すると、「営業時間外」と若い女性従業員が制止した。女性従業員は「茶席ならある」。導かれるままに腰を下ろしたのは、食堂車の一角のテーブルだった。

 女性従業員はほどなく再来、テーブルに透明のビニール袋をポンと投げ、20元(約340円)を要求した。普通の昼食代ほど。袋の中にティーバッグと豆菓子やビスケットが入っていた。「茶席」である。

 列車が動きだすと、女性従業員は食堂車の扉を閉め、立席の乗客の流入を遮った。広い空間には私1人だけ。偶然に知った座席確保の「離れ業」。そのおかげで、快適な列車の旅ができた。 (城内康伸)