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北京 新幹線のライバルは

2018年01月29日

 北京に出張するため、上海から高速鉄道「復興号」に乗った。9月に世界最速の最高時速350キロの営業運転を始めた列車だ。東京-熊本間とほぼ同じ1300キロを4時間半で結ぶ。

 発車から約15分後、車内の電光掲示板が「現在の速度350キロ」と表示した。乗客は電光掲示板をスマートフォンで写真に収めている。揺れはなく、実に快適だ。あたり構わず大声でしゃべりまくる人たちの騒々しさを除けば。

 隣に座っていたおじさんは「日本の新幹線を超え、世界一になったんだから、中国の技術力も大したもんだ」と自分のことのように喜ぶ。「世界一」という言葉は、いや応なく中国人のプライドをくすぐる。

 中国の高速鉄道といえば、6年前に死者40人を出した浙江省温州市の事故で、車両を土に埋めた光景が強烈に印象に残っている。復興号は高速鉄道への信頼回復の役割を担う。

 同時に復興号は、新幹線システムの輸出拡大を目指す日本と、いずれ熾烈(しれつ)な受注争いを繰り広げることになるはずだ。日本のライバルが、間違いなく手ごわいことを実感した4時間半でもあった。 (浅井正智)