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米パターソン 憎悪の的 苦悩絶えず

2018年02月13日

 米ニューヨークで10月、トラックが自転車専用路に突っ込み8人が死亡したテロ事件。現場には自動車の進入を防ぐ障壁が置かれ、自転車の行き交う平常が戻りつつある。

 一方、北西に20数キロ離れた街では、住民らの苦悩が続いている。ウズベキスタン出身の容疑者(29)が住んでいたニュージャージー州パターソンだ。

 イスラム教徒の集住地域として知られ、スーパーの看板などあちこちにアラビア文字が見える。「今から殺しに行く」「施設を燃やす」。イスラム教の礼拝所には、こんな電話や手紙が絶えない。オマール・アワド代表(31)は、容疑者を「けだもの」と呼んだトランプ米大統領の影響を感じている。「憎悪や偏狭が普通になってしまった」

 だから過敏にもなるのだろう。容疑者宅近くでヒジャブ姿の主婦(54)と話していたら、救急車のサイレンが聞こえてきた。主婦の顔がこわばる。「また何か起きたのかと思って」。その目から涙があふれていた。

 ニューヨークの現場に、献花とともに公民権運動を率いたキング牧師の言葉が添えられていた。「憎悪で憎悪は追い払えない」 (赤川肇)