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中国・合肥 宣伝ツアーが逆効果

2018年03月23日

 中国外務省が主催した外国人記者向けの安徽省取材ツアーに参加した。絶対に盗聴できないという量子通信技術の研究機関の視察が日程に書き込まれてあったのが1番の目的だった。

 量子通信は盗聴や暗号解読が困難な安全性の高い通信手段。欧米や日本も研究が進む中、中国も国が大量資金を投入、2016年には世界初の量子科学実験衛星を打ち上げた。

 しかし、いざ省都・合肥市にある研究の本丸、中国科学技術大学先進技術研究院の巨大なアーチ状の建物に入ると「撮影、録音は禁止です」とのお触れ。さらに、量子通信についての研究担当者も現れなかった。

 このため、各国の記者が抗議し、バスに戻ると、研究院の責任者が現れ「担当者は忙しい」と平謝り。さらに「量子通信は機密事項で、視察するには中国共産党宣伝部の許可がいる」と打ち明けた。

 安徽省の担当者に後から聞くと「量子通信の視察は私たちの権限ではなく中央の管轄だ」とのこと。省の魅力を海外メディアにアピールする絶好の機会だったのに、中国の情報秘匿と閉鎖性を露呈して、逆効果となってしまった。 (安藤淳)