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米フィラデルフィア いい「いいかげん」さ

2018年03月20日

 ニューヨーク市の自宅から車で約2時間。米東部が記録的に寒かった昨年末、1泊2日でペンシルベニア州フィラデルフィアを訪れた。1776年に独立宣言が採択され、「アメリカ建国の地」とも称される古都だ。

 初日、観光名所の入場券と乗り降り自由の周遊バスの乗車券を組み合わせたクーポンを買った。乗車券は「1日限り有効」だ。既に夕方近い。今日使うか明朝から乗るべきか-。

 迷った末、バス乗り場で乗車券を差し出した。係の女性は「この時間から?」とけげんそうに券を受け取ると、日付入りの切符に自分のサインを書いて筆者に渡し、ほほ笑んだ。「今からでは回りきれない。これを見せれば明日も乗れるから」

 米国に赴任して以来、注文と違う料理が出てきたり、役所から届くはずの書類が待てど暮らせど来なかったりと、日本では考えられない「いいかげん」にイラッとした経験は数知れない。一方で、今回のように、しゃくし定規ではない「いいかげん」なサービスに幾度となく癒やされ、助けられてきた。

 サイン入り切符はコートのポケットに入れたまま。何となく捨てられない。 (赤川肇)