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上海 統制に揺れる映画界

2018年03月19日

 先月中旬封切られた中国映画「芳華(ファンフア)」(青春の意味)を上海の映画館で見た。「狙った恋の落とし方。」などで知られる馮小剛(フォンシャオガン)監督が、軍歌舞団のダンサーたちの淡い恋や過酷な運命を描いた。中国映画でほとんど取り上げられない中越戦争(1979年)の戦闘シーンも生々しい。

 観客の大半は中高年だ。上映途中、後ろの席のおじさんが知ったふうに「あのころは・・・」と解説を始めたのには閉口したが、クライマックスに入るとあちこちからすすり泣きが聞こえてきた。従軍体験はなくとも、文化大革命など時代の大波に翻弄(ほんろう)された青春時代は、人それぞれに共感できるのだろう。

 この作品、当初は昨年9月末の公開予定だった。ところが直前に突然延期されたことで、ちょっとした騒ぎにもなった。中国では、中越戦争の元従軍兵士が退役後の待遇への不満から、しばしば抗議デモを起こしており、当局が映画をきっかけに再燃するのを恐れたともいわれる。

 お蔵入りもうわさされていただけに、上映にこぎ着けたのは幸いだったが、共産党による文化統制が進む中、2018年の中国映画界が気掛かりだ。 (浅井正智)