2018年06月01日
日独の食生活で最も異なることの1つは、日常的に生魚を食べるかどうかだ。ベルリンのスーパーには魚売り場もあるが、「生で食べられますか」と聞いても大抵は「ナイン(だめ)」と言われる。
ある魚専門店で「生食OK」のうたい文句の刺し身を買ったが、微妙なにおいが鼻につき、なかなか箸が進まなかった。
日本のような刺し身にありつくのは難しいか、とあきらめかけていたとき、友人に教わった駅前市場の鮮魚店をのぞいた。
短髪で、包丁さばきも堂に入ったドイツ人の大将に「オハヨウゴザイマス」と出迎えられた。その日、マグロ、サケ、サヨリ、オヒョウが刺し身としてお勧めだという。
オヒョウも?回転ずしのエンガワでおなじみだ。この職人はモノが違うと直感した。買ってみると、どれも日本の刺し身に負けないうまさで、以来、お世話になっている。
先日、なぜそんなに日本語が上手なのか聞いてみた。彼はほほを赤らめ「実はあいさつと数字と魚の名前しか言えない」。思わずうなった。日本で修業を積んだ職人に違いないと、思い込んでいた。 (垣見洋樹)