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ロンドン 春を運ぶ伝統の一戦

2018年06月06日

 日本で桜が咲くころ、ロンドンのテムズ川沿いでも花見のような風景が広がる。恒例のオックスフォード大とケンブリッジ大の対抗戦を見ようと大勢が川岸に繰り出し、酒を飲む。1829年から続くイベントは、その名も「ザ・ボートレース」。

 今年は3月24日に開かれ息子と2人でのぞきに行った。曇天だったが、川沿いの公園では梅のような花がちらちら咲き始めていた。出店からバーベキューの香ばしいにおいが漂い、芝生広場はピクニックシートで埋まっている。

 川を見下ろすパブは大盛況。その近くで、足首に鈴をつけたおそろいの衣装の男性たちが、アコーディオンの音楽に合わせて白いハンカチを振りながら踊りだす。「モリスダンス」という英伝統の春の踊りだそうだ。

 暗くなり始めた午後4時半ごろに女子が、その1時間後に男子がスタート。祭り気分がピークに達する。川岸に人が密集しており、人の頭の間から通過するボートがわずかに見えた。

 やや気になったのは、人種が多様なロンドンなのに、周りを見たら白人だらけ。伝統の一戦も「エリートくささ」が抜け切らないようだ。 (阿部伸哉)